'Spazieren'~お散歩ミュージック |
会場の西御門サローネは、うちから歩いて数分のところにあります。
築80年以上になる洋館で、作家の里見敦氏の元自邸なのだそう。
現在は建築事務所が管理していて、時折音楽会や映画の上映会、講演会や展示会など、さまざまなイベントが行われているようです。
(詳しくはこちらへ)
日常的にその前を通りながらなかなか建物の中に入る機会はなく、こちらへ越して来てもう1年経つのに今回でようやく2度目。
個性的な外観もさることながら、建物の中も随所に独特な意匠が凝らされていたり、渡り廊下でつながる高床式のお茶室があったりして、なかなかに見ごたえのある素敵な建築です。
そんないかにも鎌倉らしい歴史と趣のある建物の中の、おそらく60名も入ればいっぱいになってしまうようなインティメートな空間で、今回の演奏会は行われました。
休憩を挟んだ2部形式で、前半の第一部の演目は新譜'Spazieren'から。
Spazieren(シュパツィーレン)とはドイツ語でお散歩のことを意味します。
(私の趣味のひとつでもある・・^^)
中にはサティのジムノペディやビル・エヴァンスの'Waltz for Debby'を彷彿とさせる曲もありましたが、そんなことを思って聴くより、シュミート氏も言われていたとおり、お散歩の情景(木漏れ日の差し込む森の小径や、青い草原に寝そべって見上げる空に浮かんだ雲など)を思い描きながら聴くのが一番、しっくり来るように感じました。
目を閉じて曲に耳を傾けていると、やがて去年の夏北ドイツで見た風景が頭に浮かんできました。
またあるときは、10年前に訪れたデンマークの小島での光景が・・
(最近TOLOTで編集したばかりで記憶にあたらしかったのです)
そしてもちろん、心のふるさと札幌でのお散歩コースや、キャンプでドライブした道央~道北の広々とした眺め、それから以前都内暮らしの頃よく歩いた多摩川べりの広い空や雑草の生い茂る河川敷なども。。
前板が外されていて、曲によっては時折内部奏法(弦を直接指ではじいたり
手で押さえて音をミュートさせたり)も
後半は前にリリースされたアルバム'Wolken'(雲)と'Klavierraum'(ピアノ室?)から。
一部の演目とは少し趣の違う曲もあって楽しめました。
曲ごとにタイトルとその説明を氏がしてくださるので、それを手がかりにイメージを膨らませることができてよかったです。
特に私の胸に響いたのは、第2部で弾かれた古いコラールのアレンジ('Alte Kirche')。
氏の故郷の町で子供の頃繰り返し聞いて身体に染み付いているという旋律をベースに、インプロヴィゼーションを加えたと言っておられました(・・と思います)。
バロック音楽好きとしては非常に嬉しい一曲でした。
それともう一つ。
アンコールの2曲目だったか、氏が去年の震災のことに触れ、東北の被害に遭われた方々、そしてまたこのようなことが起きてしまった日本に向けて書かれたという曲('Libelle Stille Andacht 11.3.2011')が演奏されて。
氏の深い思いが伝わってくるようで、これはなんともいえない気持ちになりました。
今回の鎌倉公演はカフェ・ディモンシュによる運営で(ってことでよいのかな?多分)、堀内マスターによる淹れたてコーヒーのサービスもありました。
この日のために特別にブレンドされたコーヒー'Spazieren Blend'の芳しい香りの立ち込める空間に、静かに流れる穏やかで温かなピアノの調べ・・
なんとも幸せなひとときでした。
来日公演は今回が2度目というシュミート氏。
このあと東北各地を回られるようです(19日(日)まで)。
ご興味をもたれた方はこちらをチェックしてみてください。
(曲の視聴もできます)
ジャケットの裏側に印刷された曲名を読むだけで、結構なドイツ語の勉強になりそうです^^;